2021年4月27日火曜日

緊急事態宣言の中で〜リワークに通うことを巡って〜

新年度が始まりました。

しかし、新型コロナウィルスの感染拡大は、現在も一向に衰えを知らず、現在も感染者が増えています。

三度目となる緊急事態宣言。

リワークプログラムCRESSではこの間、コロナの危機の中、メンバーさんがいかに復職に向けてCRESSで経験を深められるのか、模索してきました。

コロナウィルスの脅威を感じながら、感染予防への取り組みを、リワークという組織としても、そして各スタッフ、各メンバーの問題意識としても、継続してきました。

同時に、コロナウィルスが収束しない中で、メンバーの皆さんがどういう思いでリワークに参加しているのか、話を聞き、一緒に考えてきました。

多くのメンバーさんは、その程度の違いはあれど、葛藤を経験しているはずだと思います。

「不要不急」という言葉を、コロナウィルスの感染拡大の中で、私たちは知ることになりました。

コロナ以前には、さほど使われることのなかった言葉です。

要らないこと、急ぐ必要のないこと、差し迫っていないことを意味する言葉なのだということです。

しかし、すべての人にとって等しく「不要不急」だと判断できる経験などあるでしょうか。

リワークで自分に向き合っている多くのメンバーさんにとって、リワークは、不要不急ではありません。

つまり、職場で生きられないくらいに辛くなって休職したメンバーが、その職場に、仕事に、もう一度戻ろうとリワークに参加している経験が、「要らない、急ぐ必要のない、差し迫っていない不要不急の経験」である訳はありません。

それは、コロナの危機の中で、メンバーさんと一緒に考えた経験で、私があらためて実感できることです。

コロナは怖いし、感染の恐怖がある。それは生死の恐怖でもあります。

しかし、仕事に行けなくなって休職している自分から、リワークが閉じたり、休止されて、この治療経験が失われてしまうことも、コロナの恐怖に勝るとも劣らない恐怖なのです。

リワークで経験を重ねてきたメンバーにとって、リワークには、本当に自分にとって必要だと感じる経験があるからです。

あるメンバーは、リワークに通うことで、職場に行けなくなった自分に向き合い始めています。

あるメンバーは、なぜ休職を繰り返しているか、考えようとしはじめています。

あるメンバーさんは、それまでは、休職して仕事がほとんどできない自分の方が、アイデンティティになっていたほどでした。仕事ができていた期間よりも、休職している期間の方が長いくらいなのです。しかし、リワークのプログラムとリワークでの対人交流を続けることで、社会からも人間的な接触からも撤退して生きていた自分には、本当は様々な感情や考えがあって、そういう自分の想いを、自分にも他人にも向けていたことを経験的に知り始めました。

あるメンバーは、人と付合うのが苦手で、集団を回避していて、職場でもそうだった。しかし、リワークで人間的な繋りを感じて、自分には理解してもらいたい気持ちや、依存したい気持ち、人との交流を求めている気持ちがあることを、知りました。

ここに描写したメンバーは、ある特定の方を指しているのではなく、リワークプログラムCRESSに参加しているひとりひとりのメンバーの中に、同時に一緒に存在しているような、そのメンバーの多様な顔です。

こういう経験をリワークでしているメンバーにとって、リワークとその繋がりは、必要であり、求められているものだったです。

そういうリワークにもし来られなくなってしまったら、自分のことを見ないし考えられない、そういう休職を無自覚に繰り返してしまう自分に逆戻りしてしまうような、そんな不安を感じるものなのです。

私は、リワークメンバーとの関わりから、そういうメンバーのリワークへの切実な想いがよく分かります。そして、そういう風にリワークを経験されているメンバーを、本当に大事な経験をされているメンバーだと思っています。

その方にとって休職という辛い経験は、しかし、新しい意味を帯びるものになるはずだと思うのです。

しかし、リワークの中だけで、私たちは完結していません。むしろ、現実はリワークの外にあります。

自分が現実に関わっている大事な人達は、リワークの外にいるのです。

「感染のリスクが少しでもあるのにならば、不要不急のリワークに行っている場合じゃない」と心配して言われる、身近な人が現れるかもしれません。直接的に言われなかったとしても、心の中ではそう思っている身近な人がいるはずです。

そういうメンバーが、このコロナの脅威の中で、自分にとって本当に必要だと確信しているリワークに通うということ。

だから、葛藤が生まれるのです。

メンバー自身も、今の自分にとって必要だからリワークに参加したいのだけれど、しかし、大事な人、守らなければならない人を、自分が外に出ることで不安にさせて、実際に感染させてしまうことにはならいないか、と不安になり苦しくなり、葛藤するはずです。

そして自分自身が感染してしまう怖さを、あらためて感じる。

葛藤し、悩みます。

やはり、しっかり向き合って、相談して、考え、判断し、主体的に行動することが大事なのです。

その相手は、私たちリワークのスタッフでもあるし、ご家族でもあるし、職場の人でもある。自分が関わっている、身近で大事な人たちです。

そして、その相手は、自分自身です。

コロナウィルスの脅威の中、自分にとって必要なリワークに通うことを巡って、私たちそれぞれが、自分と相手に向き合って、葛藤し、悩み考える経験をしている。

それが、今の私たちが取り組んでいるとても大事な仕事なのです。


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